【コラム・不動産鑑定士トシの都市Walker】パソナの淡路島”空中座禅道場”が開業間近~空飛ぶクルマで行ってみたい~〈22/4/15新規〉


自称「ほっつきWalker」である。「まん延防止等重点措置」が解除となり、制限がなくなるやいなや各地に赴いている。先日は、淡路島を訪れた。

目的の一つは「座禅リトリート&レストラン「禅坊 靖寧」(ぜんぼう せいねい)」。パソナグループが運営する。これまで「空中座禅道場」と呼ばれており、その特徴的な外観が話題だった。

以前、未来の地図サイトでも「パソナが淡路島に計画する“空中座禅道場”の建設予定地に行ってみた」として紹介されていたが、この2月に名称が決まり、4月末にいよいよオープンする。ウェブでは見ていたものの、完成間近の実物を目の当たりにしその異質さに驚いた。設計者である坂茂建築設計のサイトにて、その内部パースを含む詳細が「空中禅道場」として紹介されている。

あらためてこの施設をみてみよう。

特徴の一つ目は、禅の名の通り、身体を整える空間があること。あたらまって禅というと敷居が高く感じるが、写真にもあるようなヨガテラスだと身近に思える。二つ目は禅坊料理。豆腐などを中心とした健康料理である。三つ目は展望デッキや露天風呂、そしてコテージ風の宿泊施設から見渡せる自然の風景。

健康志向な人にはもってこい。都会とは異なる、マインドフルネスを感じさせる空間だ。

ちなみに、「靖寧」とは、広辞苑によると「静かで安らかなこと。世の中が安らかに治まること。また、そのさま」とある。コロナ禍や国家間紛争といった災厄が続く中、この名のとおり、そうなることを祈るばかりだ。

さて、この淡路島。数年前から話題の島である。報道のとおり、人材派遣会社のパソナが本社を東京から淡路島へ移すことがその理由の一つ。同社が地域創生の一環として県立公園をプロデュースした「ニジゲンノモリ」も前記「空中座禅道場」からすぐの場所にある。コロナ禍で影響は受けたものの、訪問当日、駐車場は一杯で、人が多く集い、今後、相乗効果が期待される。

大阪からだと、車を使って、阪神高速道路を経由、明石海峡大橋を渡って、約1時間半。公共交通機関はバスしかないため、多くの人は車を使うことだろう。ただし、春・秋の行楽シーズン、5月の大型連休や年末年始などは渋滞に悩まされることが茶飯事だ。筆者は兵庫県出身だが、淡路島に対し依然として時間距離を感じることが少なくない。

そんな人々に朗報だ。

渋滞もなく、ほぼ直線的に現地へ到達できる。他人と一緒になることがなくパーソナルスペースを確保したまま移動可能。外の景色は360度開放。しかも、要する時間は半分以下。そんな夢物語が夢でなくなる日が間もなくやって来る。

そう「空飛ぶクルマ」だ。

関西万博に向けて、その開発は着々と進んでいるが、特にここ最近のスピードは加速しているように感じる。3月に、大阪府が空飛ぶクルマの実現に向けた「大阪版ロードマップ」を公表。万博という国家プロジェクトの後押しもあるが、吉村知事が「実現させる」と熱く語ったのを目の前で見たとき、早期に稼働することは間違いないと感じた。

特にその効果が大きいのは、海上を通るルート。陸運ではありえないルートを使うことが可能だし、海運ではそのスピードが圧倒的に異なる。

とすると、まずは関西空港や神戸空港といった海上空港がその利便性を享受するだろう。そして、瀬戸内海に浮かぶ島々。その筆頭であり、移動ニーズが有り余る淡路島が受ける恩恵は相当大きなものとなるに違いない。淡路島の立地ポテンシャルを激変させる可能性を秘めたプロジェクトだ。あわせて、不動産マーケットも少なからず影響を受けるだろう。

もちろん、安全面の課題はあるし、何よりも現時点では大量輸送能力を有していないことも理解している。ただ、いつの時代も先駆者はそれを乗り越えてきた。

「空飛ぶクルマ」の開発企業の一つであるスカイドライブ(愛知県豊田市)の紹介動画を見たとき、経験したことのない高揚感を味わった。また「『空の移動革命』、そこでファーストペンギンとなること」だという彼らの宣言に感銘を受けた。

飛べない鳥、ペンギンは泳ぎに長けている。ただ、氷の上から海に飛び込んだ最初のペンギンには想像を絶する勇気が必要だったに違いない。そんなイメージが伝わってくる。

近い将来、「ちょっと座禅しに淡路島行ってくるわ。空飛ぶクルマで。」なんて普通に会話しているかもしれない。ワクワク感がおさえられないのは筆者だけだろうか。

■略歴■
不動産鑑定士トシこと深澤俊男(ふかざわ・としお)。不動産業界に30年以上。CBRE総研大阪支店長を経て、深澤俊男不動産鑑定士事務所代表、株式会社アークス不動産コンサルティング代表取締役。「物言わぬ不動産と都市不動産マーケットの語り人」として、中立的な立場で独自視点の調査コンサル・講演活動などを行う。上場企業、自治体、各種団体、大学など独立後13年間の講演・講義回数は約300回。その他、本邦初のサービス「ビル史書」や「地跡書」を展開中。趣味は旅行。全国47都道府県に足跡がある、自称「ほっつきWalker」。感想をこちら(info@arc-s.biz)までお寄せください。こちらから「☆コラムちらし☆20220415☆」をダウンロードできます。