■2021年地価調査の発表
10月1日に、全国に発令されていた緊急事態宣言及びまん延防止等重点措置が全面解除となった。この1年半の期間、休業等を余儀なくされた飲食店の方々をはじめ、ひとまず安堵している人が多いのではないだろうか。
これに先立つ9月21日、21年地価調査が報道発表された。詳しくは国土交通省が発表した「都道府県地価調査」にまとめられている。あわせて、昨年秋のコラムで書いた「地価調査を見る際に気をつける点」を確認していただくことを補足しておきたい。
■「箕面船場阪大前」の駅前に所在する大阪大学箕面キャンパス
さて、今回の地価調査の結果はどうだったのだろうか。昨年はキタがミナミを逆転したという話題(上記コラム参照)があったが、今回はそのようなトピックスがあまりみられず、ほぼ納得感のある結果だった。
そんな中、大阪圏(※)での話題でやや意外と思えたのは、商業地において、箕面市の基準地地点(箕面5-3)が圏内最高変動率となったことだろう(「商業地の上昇率順位表(圏域別))。
なお、その地点の至近において、北大阪急行電鉄の延伸に伴う新駅「箕面船場阪大前」の開業が、計画延期を経て23年度に予定されている。その隣接エリアでは、今年春に大阪大学(阪大)箕面キャンパスが開設された。この一連の動きが今回の地価上昇に寄与したのであろう。
ちなみに、この地点は20年7月から21年7月の1年間で7・8%上昇。なお、その前年は同10・9%上昇で、上昇率そのものは縮小していたが、大阪市内などの商業地地価がコロナ禍で落ち込み、相対的に順位が上がったことが一因であろう。
※大阪圏:大阪府の全域、京都府・兵庫県・奈良県の一部を指す(具体的な範囲のイメージはこちらを参照)。
■阪大箕面キャンパスの設立経緯と開発プラン
新キャンパスの開学までの経緯を簡単に振り返ってみよう。
07年に大阪外国語大学と大阪大学が統合されたところから始まる。14年に、箕面市から、新駅前の再開発エリアに、「関西スポーツ科学・ヘルスケア総合センター」を整備する方針を公表し、そこに大阪大学が協力することとなった。16年、キャンパス移転にかかる合意書を締結した後、着工し、21年4月に開学した。
大学の敷地面積は約8000平方㍍。そこには外国学研究講義棟(地上10階建て)と学生寮が所在。南側隣接エリアには、図書館・文化交流施設、市民文化ホールなどが併設され、それぞれデッキで結ばれている。さらに新駅にもつながる予定だ。
(出所:箕面市)
ただし、北大阪急行線の延伸及び上記駅の開設が上記のとおり延期となったため、現状、最寄り駅は千里中央駅などで、学生はバスを利用するか駅から徒歩で通学している。
■阪大新キャンパスを訪問
電車を使えない学生の気分を体感するため、キャンパスへは千里中央駅から歩いてみた。グーグルマップでは徒歩26分だったが、新御堂筋沿いの歩道は緩やかな上り坂であったため、それ以上に感じた。前から坂を下りてくる自転車は誰もペダルをこいでなかったから、その角度は結構あるのだろう。普段は車で通ることの多い幹線道路の起伏は、ウェブ上ではわかりにくいことなのかもしれない。
坂を上り切ったら、道路の両側に高い建物がちらほらあり、新駅の予定地となる道路側は工事中。
そこから東へ入ったところに今回の開発エリアがあり、その一番南側に市民文化ホール。
図書館・文化交流施設を経て、最も北側にあるのが、阪大箕面キャンパスと学生寮。
これらと駅をつなぐペディストリアンデッキは途中までしかなく、商業施設が予定されている隣接エリア開発は未舗装の平面駐車場であった。これらがすべて完成するのはまだ先になりそうである。
このキャンパスは外国語学部で、元々の大阪外国語大学の流れを汲んでいる。事実、外国人をちらほら見かけたし、学生も何となく洗練されているような印象を受けた。
北摂エリアは、大阪府下において、以前から欧米系の外国人居住者が比較的多いといわれている。ひとまず新駅開業予定の23年度末、そして地区全体の開発が完了する時期にはどう変化しているか。また、その時々で、既存住民をはじめ関係者や外国人がこのエリアをどう評価するのだろうか。アフターコロナにおけるさまざまな行政の誘引施策や民間事業者の動きなど今後の展開が期待される。
■おまけ:阪大箕面キャンパスの食堂のおすすめメニューはこちら
(出所:大阪大学生活協同組合ホームページ)
食堂は前記外国語研究講義棟の3階にある。食堂内の撮影は控えたが、きれいの一言。学生教職員優先時間を外せば、一般人も利用できる時間帯が設けられている(平日13時~14時)。
学食ならではのリーズナブルな料金で、迷いつつ、蒸し鶏ゴマ味噌ラーメンをオーダーした。
辛みを期待していたものの、それを上回る香ばしさと旨味が口の中に広がり、ちぢれ麺との相性もよかった。
なお、近くに並んでいた男子学生たちが単品しか頼まない状況には少々戸惑った。見た目、体育会系学生はいなかったが、昔と比べ、今の学生諸君は相当小食なのでは?と実感したひと時だった。
■略歴■
不動産鑑定士トシこと深澤俊男(ふかざわ・としお)。不動産業界に30年以上。CBRE総研大阪支店長を経て、深澤俊男不動産鑑定士事務所代表、株式会社アークス不動産コンサルティング代表取締役。「物言わぬ不動産と不動産マーケットを語る専門家」として、独自視点の調査コンサル・講演活動などを行う。独立後12年間の講演・講義回数は約300回。趣味は旅行。全国47都道府県に足跡がある、自称「ほっつきWalker」。