■ドラマ「ドラゴン桜」の見どころ
「バカとブスこそ東大に行け!」。そんな台詞で、毎週日曜日の夜が熱い。
4月からドラマ「ドラゴン桜」の第2弾の放送が始まった。テレビ離れが進んでいると言われる若年層にも注目されるこのドラマ。今回初めてみた人、前作に続き楽しみにしている人、さまざまだろう。
ドラマのあらすじや内容はともかく、個人的に注目している点がある。それは主演の阿部寛でも他の俳優たちでもなく、ドラマの舞台となる龍海学園高校をはじめとしたロケ地だ。
インターネットでは各シーンの具体的な場所が紹介されている。
たとえば、ドラマの施設は「とちぎ海浜自然の家」で茨城県に、部活の体育館は埼玉県に、主演者が不良生徒をバイクで追い詰めた学内の廊下は栃木県に所在するという。このようなサイトをよく目にするのは、撮影場所に興味を持つ人が世の中に多く存在するからではないかと感じている。
■以前からある聖地巡礼
この傾向は今に始まったことではない。
例えば、2016年に封切られた映画「君の名は」。特徴的なタッチで描かれた美しいシーンで注目された作品だ。その後、実在する映画の場所に足を運ぶ、いわゆる「聖地巡礼」という言葉が流行語になるほどの社会現象を巻き起こした。
また、同時期に上映された「シン・ゴジラ」。不動産業界でも少々話題になった。というのも、従来、特撮というと、東京タワーなど以外はかなり大雑把に作られていたことが多かった。ところが、この映画は東京近郊の市街地が精巧に作られており、実在する都市の中をゴジラが移動していく様子は興味深く映ったのではないだろうか。
さらにテレビCMでも話題の場所などが取り上げられることや、趣きは少々異なるが、カラオケ画面の背後の風景も同様だ。あの建物はどこにある何という名前のビルで、有名企業が入居しているなど、商品よりも背景に広がるシーンが気になることも珍しくはない。
ただ、個人的には少々残念な時代であるようにも感じる。すでにふれたが、今はネット検索すれば容易く突き止められる。答えがすぐ横に書いてある問題集のようだ。あの風景はどこだろうか、それを少ない手がかりを基に、紙ベースの地図で探し、そして、見つけたときのワクワク感はネットとは違う感動を覚える瞬間である。もちろん、そう思えるかどうかは人それぞれだろうが、アナログ探索の味わいも捨てがたいものである。
■東大受験への準備~従来の心配ごと、そしてコロナ禍~
さて、ドラゴン桜の話題に戻ろう。
冒頭の写真はどこだろうか。そう、東大の赤門である。
東大を受験する人たちにとって象徴とでもいうこの場所を彼らは当然承知している。しかし、受験生ははたしてネットやグーグルストリートビューを閲覧して終わりだろうか。
東大卒で、NY州弁護士の山口真由氏はあるコラム「東大首席の女性法律家 「受験パニック」克服法」で、試験会場を下見することは不可欠だと語っている。想定外のことも起こり得る受験に際し、聖地ともいえる志望大学を事前に自身の目で見ておきたい学生は想像以上に多いと思われる。
学生にとって受験やその下見イコール行楽旅行ではないが、広い意味では旅の一種であろう。ネットではなく、リアルに目的とする場所に行きたい、雰囲気を味わいたい、そこで何かを感じたいという思いは、人間の欲求の一つなのかもしれない。
ところが、である。現状はコロナ禍の最中。自由に旅することが制約されている。
■新しい仮想空間の旅サービスが提供予定
そんな中、先日、ANAがスマホ上の仮想空間で旅行ができる新サービスを来年から始めると正式発表した。観光名所などを3次元のコンピューターグラフィックスで再現し、時空を超えた旅客機にアバターで搭乗し、旅を楽しむスタイルだ。ちなみに、サービス開始は22年とのこと、個人的に楽しみにしている。
もしもドラマや映画の聖地巡礼が仮想空間でできたなら。コロナ禍で旅行ができず不満を持つ人々にとって吉報であろう。今後はアバターで仮想旅をする、それが未来における旅行のスタイルの一つになるかもしれない。
■受験生へ大人たちができること
立場を受験生に置き換えたとき、これらのツールを用いて、彼らが現地の雰囲気を体感する手段の一つとなれば、地方と都市の受験格差などの縮小に寄与するのではないか。
緊急事態宣言が断続的に発令され、人の移動が制限されている。知恵を絞ることで、受験生が余分な負担を受けずに、その力を発揮できる環境づくりをしてあげられるのかもしれない。日々の苦しい勉強は代われないが、そこは大人たちの腕の見せ所であろう。
【著者略歴】
不動産鑑定士トシこと深澤俊男(ふかざわ・としお)。不動産業界に約30年。大手不動産サービス会社(現CBRE)でCBRE総合研究所大阪支店長を経た後、2009年に深澤俊男不動産鑑定士事務所を開業、12年に株式会社アークス不動産コンサルティングを設立。大阪市立大学大学院創造都市研究科修士課程修了。近畿大学非常勤講師などを務める。趣味は旅行。全国47都道府県に足跡がある、自称「ほっつきWalker」。