【コラム・不動産鑑定士トシの都市Walker】「旗艦店」と称される回転寿司店が大阪の都心に進出!〈21/5/21新規〉


コロナ禍が1年以上続き、店舗業界が大きな痛手を受けて久しい。特に飲食店舗は時短営業などで厳しい経営状況が続いており、大阪の繁華街も空き店舗が増えている。

そんな中、飲食業界で話題なのが、回転寿司チェーンの新規出店である。

先月下旬、スシロー梅田茶屋町店くら寿司道頓堀店の都心型店舗が相次いでオープンした。

スシローは阪急梅田駅から徒歩1分の店舗ビル、くら寿司は道頓堀のホテル併設型ビルへの出店である。ちなみに、誰もが分かるキタとミナミの中心繁華街にあること、どちらも路面、すなわち1階ではないという共通点がある。

回転寿司といえば、ロードサイドに広い駐車場を確保し、都心というより郊外に店舗が多いイメージがあるが、その常識を覆すような超が付くほどの都市中心地に店を構え、特に、くら寿司の場合、「グローバル旗艦店」と銘打っている。どデカい広告や有名タレントを使ったテレビCMを目にすることも多いだろう。

今回はこの「旗艦店」というネーミングに着目してみよう。

そもそも消費者はこのワードにどんなイメージを持っているのだろうか。

というのも、不動産業界において、今でこそこの言葉は耳慣れてきたものの、ひと昔前はほとんど使われていなかった。そもそも「旗艦」とは軍隊で使われていた言葉で、その英語名はフラッグシップ。艦隊の中において指揮官が座乗するシンボリックな艦艇という海軍用語を基にしている。元々は外資系アパレル会社の社員が業務上使っていたからだったのではないかという噂話を耳にした程度で、その発端は定かではない。

では、大阪都心でこの言葉が使われ始めたのはいつだろう。目安の一つとなるのが、2009年のH&Mや、10年のユニクロといったカジュアルアパレル系店舗が出店した頃だろうか。そこに行けば欲しい商品を手にすることができる豊富な品揃えで、ユニクロについては1000坪(3300平方㍍)を超える面積というこれまでとスケール感を異にするフラッグシップ店舗であった。

文字通り、旗艦という名がふさわしいその店がミナミへ出てから、不動産業界やマスコミもこのワードを使い始め、近時では様々な店舗業態でもその冠を見かけるようになった。

例えば、家電量販店の「エディオンなんば本店」が19年に出店した際に、旗艦店と呼ばれた。これは体験型施設を店舗内に取り入れ、これまでの売り場と異なったデザインコンセプトへ変えたことのアピールも影響しているのだろう。

さらに、大阪都心部のあるパチンコ屋にも「旗艦店」のポスターが掲げられているのを見かけた。ここまでくると、このワードが少々安売りされていると感じられたのは筆者だけだろうか。

先般、オープン間もない「くら寿司道頓堀店」に足を運んだ。エントランスの雰囲気は冒頭の写真のように他店とは異なり、店内は白木を基調とし、提灯を形取った照明や暖簾が多く使われるなど和の佇まいや風情に驚いた。また、随所に今の時代を踏まえた非接触型の工夫や仕掛けがみられた。聞けば、クリエイティブディレクターの佐藤可士和氏が監修とのこと。ハード、ソフトの両面で、様々な世代からの評価が期待される。

また、「スシロー梅田茶屋町店」も、非対面の自動土産ロッカーなど時代に即したサービスを取り入れている。どちらも、実際に足を運んで、新しい空間を体感してもらいたい。

「旗艦店」というネーミングが市民権を得てきた現状は、単に大きさや品揃えで他の店舗を凌駕するだけでなく、消費者へ訴える独自のこだわりや工夫、そして興味を引くことがこれまで以上に必要な段階に入っているだろう。「才色兼備で面白い」がその店特有の魅力となり、それが必須になるといってもいいかもしれない。

また、足元のみならず他業界や他業態に向けての新たな発信拠点になることも重要であろう。今後は、それらが重層的に備わることで、消費者側から「旗艦店」という称号が与えられるのではないだろうか。

今は向かい風の店舗業界であるが、アフターコロナに、次々と「旗艦店」が誕生することを期待してやまない。

【著者略歴】

不動産鑑定士トシこと深澤俊男(ふかざわ・としお)。不動産業界に約30年。大手不動産サービス会社(現CBRE)を退職後、2009年に深澤俊男不動産鑑定士事務所を開業、12年に株式会社アークス不動産コンサルティングを設立。大阪市立大学大学院創造都市研究科修士課程修了。近畿大学非常勤講師。趣味は旅行。全国47都道府県に足跡がある、自称「ほっつきWalker」。