【コラム・不動産鑑定士トシの都市Walker】”U5H”ってなんだろう?〈21/2/12新規〉


この3文字、そもそもなんと読むのか。そして、どういう意味だろう?
パソコンの新製品?鉄道関係?それとも何かの暗号?
先般、仕事でこれらを巡ったとき、あらためてその奥深さを体感した。

さて、正解は、United 5KOKU of HYOGO(ユナイテッド・ゴコク・オブ・ヒョウゴ)。略して「U5H」。これでピンとくるのは地理と歴史の両方に強い人ではないだろうか。なぜ、地理と歴史かというと、5つの地域について、時代を遡るという視点が必要だからだ。そう、5KOKUとは旧国名である。

兵庫県は今でこそ一つの県だが、明治以前は5つの国に分かれていた。厳密にはこれら旧国は分割され、大阪府や京都府といった隣接府に跨っているものもある。ただ、それでも北海道を除いた46都府県の中で、5つの旧国というのは兵庫県のみでもっとも多い。

また、五畿七道という飛鳥時代に誕生したともいわれる地方行政の区分においても、畿内、山陰道、山陽道、南海道と4つのエリアに跨っており、全国的に珍しい県である。

この「兵庫五国連邦(U5H)」。改めてみると、これら5つの地域は同一県内とはいえ地域性が大きく異なる。詳しくは紹介ホームページに譲るが、以下では、BtoB向け商品サービスを取り扱う大手企業が営業拠点を展開することを想定した場合の、個人的な印象を列記してみる。

まず、「神戸・阪神」。神戸市はさておき、尼崎市の市外局番が「06」であるなど、阪神エリアと大阪との結びつきは以前から強く、その時間距離の短さから、大阪にてカバーできる範囲が広い。取り扱う商品やサービス、企業の営業方針等により拠点展開の数や内容が大きく変わるところであろう。

次に、「丹波」。明治時代の廃藩置県で兵庫県と京都府に分割された経緯がある。篠山市が丹波篠山市へ改名するにあたり、隣接する丹波市と揉めたのは記憶に新しい。近年の高速道路などのインフラ整備の結果、大阪や京都からのアクセスが向上しており、大都市からのリモートで賄える可能性が高く、また中心都市も見極めにくいため、拠点展開はやや見込みづらいエリアであろう。

次いで、「但馬」。冬季、西日本有数の豪雪地帯となるため、雪に慣れていない筆者は何度も悩まされた。大阪から中心都市である豊岡市までの時間距離は5KOKUの中でもっとも長い。ただし、近年、高規格道路が豊岡市の手前まで整備されアクセスが向上したこともあり、商圏設定を見直す企業がみられることなどから拠点展開は限定されたものであろう。

さらに、「播磨」。瀬戸内海に面するこのエリアは、但馬と異なり気候が比較的温暖で、また鉄道、道路ともに交通アクセスが充実している。中心都市は姫路市であるが、駅前地区は兵庫県内では神戸市に次いでビル集積度が高い。兵庫県内で拠点展開するなら姫路市を主とした地域に展開し、西兵庫から但馬地方に至るまでの広域的なエリアをカバーする企業が多い印象である。

最後に、「淡路」。兵庫県の中では異質な雰囲気を醸し出すエリア。神話の世界で日本の発祥はこの地からというエピソードもある。明石海峡大橋が開通してからは神戸などから必要に応じて出張営業していた企業が目立ち、淡路島内に積極的に拠点を構えるケースは多くはなかった印象だ。そんな淡路島へ、昨年、パソナが移転を決定したことが話題となった。また、先日、淡路島3市などがパソナとともに、企業が本社機能の移転する際の支援をする協議会を立ち上げるというニュース「パソナと淡路島3市などが協議会 本社機能移転など後押し」(神戸新聞)が報道された。さて、今後どのような展開がみられるのか、そして地域にどのような影響を与えるのか注目である。

このように、兵庫県は単一県でありながら、様々な顔を持った、異なる特性を持つ地域なのである。

「U5H」のうたい文句である「私は兵庫、けれども〇〇です」。この〇〇に各地域の名称が入るのであるが、何とも郷土愛を感じるコピーではないだろうか。そして、様々な場面で多様性が叫ばれている中、今の時代にマッチしている都道府県の一つではないだろうか。

【著者略歴】

不動産鑑定士トシこと深澤俊男(ふかざわ・としお)。不動産業界に約30年。大手不動産サービス会社(現CBRE)を退職後、2009年に深澤俊男不動産鑑定士事務所を開業、12年に株式会社アークス不動産コンサルティングを設立。大阪市立大学大学院創造都市研究科修士課程修了。近畿大学非常勤講師。趣味は旅行。全国47都道府県に足跡がある、自称「ほっつきWalker」。