【コラム・不動産鑑定士トシの都市Walker】コロナ禍の地価動向をつかむためのお薦めデータが発表されました〈20/11/27新規〉


昨今、地価の動きがよく分からないとの意見をいただくことが多くなった。インターネットでこれだけ情報が手に入れやすい時代であっても、想定外のことが起きると見極めにくいというだろうか。

近時では公的土地評価の一つである、「令和2年地価調査」が9月下旬に発表されたことを先般のコラムで紹介した。この調査はコロナ禍が起きた後の7月1日時点のものであることから注目された。ただ、それは厳密にいうと、あくまで2019年7月1日から20年7月1日までの1年間における地価の動きを示したものであって、コロナ禍の時期のみがクローズアップされたわけではない。特に昨年から今年初頭まで不動産価格は相当上昇していたので、特にそう思われる。

そこで、もっと短期での地価の動きを把握できる指標はないだろうか?という質問を受けることが少なくない。そのようなニーズに応えるため、07年から始まった制度がある。それが、「主要都市の高度利用地地価動向報告」、略称「地価LOOKレポート」である。

そのレポートの最新版「【第52回】 令和2年第3四半期 (令和2年7月1日~令和2年10 月1日)」が20日に国土交通省から発表された。細かな内容や結果については、国土交通省のサイト「主要都市の高度利用地地価動向報告~地価LOOKレポート~」に譲るとして、以下では、その特長をみていく。

一点目は、一般的に地価変動の大きい高度利用地の商業地と一部の住宅地の地価を四半期ごとに定点観測している点である。昨今の状況からして、1年間での地価動向を前提とすると各種判断をミスリードする可能性が高いため、できる限り短いスパンで観測する必要がある。また、これらの地点は先んじて動く傾向があることから参考となるだろう。

二点目は、価格の基準となる時点(価格時点)と発表される時点(公表時点)が公的土地評価に比べ短いことである。上記の20年地価調査の価格時点は7月1日、公表時点が9月下旬と約3か月間のタイムラグが生じている。地価が安定推移している平時はそれほど気にすることはないかもしれないが、今回のコロナ禍においての3か月はそのインパクトが相当大きい。したがって、この両時点はできる限り短い方がよいだろう。

三点目は、地価変動がベクトル(矢印)で示してあるため、状況が視覚的にかつ瞬時に判断しやすく、一覧にすると他のエリアとの比較も容易である。明確な価格と対前年変動率が数値で示されている公的土地評価は意義あるものだが、矢印の傾きだけでも大まかではあるが、時間的な比較、立地間の相対的なトレンドは見極められるだろう。

四点目は、担当した不動産鑑定士のコメントが地価動向として追記されていることである。既存の公的土地評価とは異なり、取引現場の状況を反映した定性的な観点での動向が分かり易くなっている。

なお、この情報はインターネットで開示公開されており、不動産事業に関わる方々のみならず、広く一般の人々にとってもいつでも閲覧可能である。

一方、留意点としては、全国のあらゆるエリアを網羅しているわけでないこと、具体的な価格が表示されていないことなどが挙げられるが、上記の特長から、また公的土地評価とはそもそもの目的が異なることから、受け入れられるのではないだろうか。

このように、短期間の地価トレンドを把握することができることなどから、今のような時期には特に意義ある指標であろう。不動産事業に関わる業界人はもちろん、一般の方々にもぜひ四半期ごとにチェックしていただきたい指標の一つである。

【著者略歴】

不動産鑑定士トシこと深澤俊男(ふかざわ・としお)。不動産業界に約30年。大手不動産サービス会社(現CBRE)を退職後、2009年に深澤俊男不動産鑑定士事務所を開業、12年に株式会社アークス不動産コンサルティングを設立。大阪市立大学大学院創造都市研究科修士課程修了。近畿大学非常勤講師。趣味は旅行。全国47都道府県に足跡がある、自称「ほっつきWalker」。