【コラム・不動産鑑定士トシの都市Walker】話題の地図には表せなかった?東京にはない大阪のシンボリックな○○○〈20/10/30新規〉


私事であるが、東京で10年近くビジネスライフを送っていたので、東京での土地感は今も持ち合わせている。よって、東京の企業や投資家の方々から、大阪のこの地区は、東京でたとえればこの場所というようにイメージを伝えることはこれまでにもよくやってきた。秋葉原は大阪の日本橋、茅場町は大阪の北浜という辺りは誰でもわかるだろうが、中津とか玉造とか弁天町といわれても両都市にある程度精通していないとなかなか例は挙げにくいだろう。特にインバウンドが増えてきた頃から、外国人の方々や投資家に対してはそのような伝え方をしなければならない場面が増えてきた。

で、ここにきてコロナ禍である。現場に赴きにくい時世においては、さらに土地感が重要になっているような気がする。

そんな中、最近、Yahooニュースなどで取り上げられ、ネットで話題になっている地図がある。その名も「東京の街を大阪でたとえたらMAP」だ。

要は、東京の地図上に、大阪の具体的な地名を書き込んでいる地図である。まさにその通りとひざを打つものや、少し考えさせられるものも含まれているが、それはそれで面白い。

例えば、新宿は梅田、渋谷は難波、銀座は心斎橋、品川は新大阪などをはじめとし、汐留はOBP(大阪ビジネスパーク)、新大久保は鶴橋、日暮里は新今宮など。また、兵庫県内のまち、たとえば西宮北口や尼崎なども落とし込まれている。両都市に縁のある方々にとっては興味深い地図であろう。また、両都市を一覧表にまとめたものもネットには散見される。

これらを一通りみた後、以前から気になっていたことをあらためて思い出した。

それは大阪のメインストリートである御堂筋に該当する通りが東京には見当たらないことだ。御堂筋は、以前から大手企業の集積度合いや世間一般の知名度などによって大阪ビジネス街の中心の一つであり、いわば象徴であった。これに該当するメインストリートは東京ではイメージしづらい。

丸の内界隈が候補としてあげられるかもしれないが、それはあくまで面的なエリアを対象とし、通り沿いというものではない。大手企業が集積する日比谷通りや数年前に開通した環状2号線(通称マッカーサー通り)も少し違う。東京は通り沿いに伸びるよりも面的に広がるスタイルでまちが拡張しているし、新宿や渋谷など多拠点ターミナル化が進んでいることからストリートなるものが埋没してしまっているのかもしれない。

ちなみに、他の都市をみてみると、京都には烏丸通り、神戸にはフラワーロードというメインストリートがあるように、東京以外の地方都市にはこのような目抜き通りが多くみられる。そして、従来からそこでの主役は都市の中心に多くみられるオフィスビルだった。

大阪へ居を移してから20年以上が経ったが、これまでオフィス市況に関しては、まず「御堂筋はどんな状況か」という問い合せやヒアリングを数多く受けた。東京からみると、「大阪のオフィス市況≒御堂筋のオフィス市況」だったのである。

ただ、2010年頃以降は梅田阪急ビルやグランフロント大阪など梅田に大型ビルが竣工しはじめ、御堂筋の注目度が相対的に下がりはじめた感がある。今後、特に22年以降はさらに梅田界隈での大型ビル竣工ラッシュが予定されている。

このように昨今、オフィスマーケットの重心は北に移りつつある。また、御堂筋沿いのビルの建て替えが進み、ホテルなどオフィス以外の用途が散見され始めたことから、以前と比べ、御堂筋の位置付けがさらに分かりづらくなっていると感じる。

そんな中ではあるが、今後、このシンボリックなストリートがどのように変貌していくのか引き続き注目していきたい。

【著者略歴】

不動産鑑定士トシこと深澤俊男(ふかざわ・としお)。不動産業界に約30年。大手不動産サービス会社(現CBRE)でCBRE総合研究所大阪支店長を経た後、2009年に深澤俊男不動産鑑定士事務所を開業、12年に株式会社アークス不動産コンサルティングを設立。大阪市立大学大学院創造都市研究科修士課程修了。近畿大学非常勤講師などを務める。趣味は旅行。全国47都道府県に足跡がある、自称「ほっつきWalker」。