東京の本社機能の一部を兵庫県の淡路島に移転することを発表した、パソナグループ(東京都千代田区)。9月から段階的に移転を開始、グループ全体の本社機能社員約1800人のうち約1200人を約3年半かけて移転させる壮大な計画だ。淡路島の現地ではすでに移転の受け入れ作業が始まっていた。
【淡路夢舞台の展望テラスエリアに入るパソナグループオフィス】
パソナグループの淡路島オフィスが入っているのは、建築家の安藤忠雄氏がグランドデザインした「淡路夢舞台」(淡路市)だ。「ウェスティンホテル淡路」(10月からグランドニッコー淡路)と、温室「奇跡の星の植物館」に挟まれた展望テラスエリアの2階と3階に入る。もっとも安藤建築らしい空間となっている。
【展望テラスエリアの2階と3階にパソナが入っている】
休日だったため、オフィス内に人はいなかったが、東京の本社から運び込まれた段ボールなどが積んであった。パソナグループオフィスと同じフロアには、実践的な英語を学べる「パソナ・グローバル・サロン」も入っていた。
【同じフロアにはパソナ・グローバル・サロンも入居】
今回の移転の理由として、同社は働く人々の「真に豊かな生き方・働き方」の実現と、グループ全体のBCP(事業継続計画)対策の2つを挙げている。パソナが東京・大手町から淡路島に移すのは、人事、財務経理、経営企画、新規事業開発、グローバル、IT・DV(デジタルトランスフォーメーション)などの機能。淡路島の拠点には、外部企業も利用できる「ワーケーション施設」を併設し、新しい働き方を体験できる場も併せて提供する予定だ。
同社は、2008年から農業の活性化・独立就農を目指すチャレンジファームを皮切りに、淡路島で”人材誘致”による独自の地域活性事業に取り組んできた。これまで日本初の体験型エンターテインメントアニメパーク「ニジゲンノモリ」、ハローキティをテーマにしたレストラン「HELLO KITTY SMILE」、宿泊施設「グランシャリオ 北斗七星135」などを淡路島で展開してきた。
同社は、淡路島内で土地の取得にも積極的に動いている。淡路市が18年に市有地約2㌶を売却する土地利用事業者の公募で、パソナグループが選ばれ、18年12月に淡路市立会館アソンブレホールの隣接地を取得した。同社は「飲食店を含む複合施設を整備する」としている。
【市立アソンブレホールの隣接地を18年に淡路市から取得】
その半年前の18年6月にはその南側の土地約1・6㌶も、淡路島でヨットハーバーなどを運営するサントピアマリーナ(兵庫県洲本市)から購入しており、淡路インターチェンジ(IC)から近い、瀬戸内海を望む好立地にまとまった土地を確保している。このほか、淡路市内の山中にも自社の宿泊施設を計画中だ。
パソナの本社機能の一部移転に対して地元の期待は大きく、移転発表後はその話題で持ち切りだという。今後は関連施設の開発が進むとみられ、パソナ移転が起爆剤となり、淡路島が大きく変わりそうだ。