【コラム・街談巷説】大阪・中之島で道路に突き出すガラスの箱が、ようやく出番〈20/8/22新規〉


2021年度の開館を目指して、建設工事が急ピッチで進む「大阪中之島美術館」(大阪市北区)。その敷地の東側に、道路を挟んで都市広場「中之島四季の丘」があり、広場の南側に2本の円柱で支えられ、道路に突き出した奇妙なガラスの箱が浮いている。丘の上からも立ち入り禁止になっており、箱の中は雑草が生い茂っている。道を歩く人も、見上げる人は少ない。

18年に正式名称が決まった「大阪中之島美術館」だが、開館までの道のりは随分と遠かった。大阪市が新美術館の構想を発表したのは、1983年8月。90年には準備室が新設された。まさにバブル景気の最盛期。

98年に基本計画が策定されたものの、財政状況の悪化から計画は凍結された。時は流れ、2010年代に入り、再び建設の機運が高まり、ようやく30年越しの計画が実現しようとしている。

収容する作品は、日本近代と日本現代を中心に5600点をすでに収集済み。関係者によると「1990年代の財政的に余裕のあった時期に積極的に収集した」こともあり、モディリアーニなど有名な画家の作品も含み、見応えがありそうだ。

さて、脱線してしまったが、ガラスの箱に話を戻そう。中之島四季の丘は、東側に建つ事務所ビル「ダイビル本館」の竣工に合わせて、2013年2月に整備された。ちょうど新美術館の建設機運が再び高まり始めた時期だ。

そう、ガラスの箱は、将来の新美術館の建設を見越し、道路をまたぐ歩行者デッキの一部として先行して建設されたものだ。そして、すでに7年半が経った。

中之島四季の丘から整備される歩行者デッキを渡れば、人工地盤を介して新美術館のエントランスに行けるだけでなく、もう1本の歩行者デッキを通じて、敷地南側の「国立国際美術館」や「大阪市立科学館」ともつながる。

その貴重な役割を担う歩行者デッキがようやく出番を迎える。完成後には、四つ橋筋側から新美術館が加わる文化芸術エリアを目指し、多くの人がこのデッキを渡る姿が目に浮かぶ。ガラスの箱の中の生い茂った雑草を刈り、空中でつながる日が近づいている。