大阪の玄関口、新大阪でオフィスビルの開発が相次いでいる。建設ニュースの調査によると、事務所ビル6棟が建設中または計画中で、今後3年の間に全棟が完成する。新大阪エリアは、インバウンド(訪日外国人観光客)需要で5年ほど前からホテルの開発が活発だったが、供給過剰で昨年ごろまでにほぼ終息、代わってオフィスビルの開発が一気に盛り返してきている構図だ。
建設・計画中のオフィスビルを分析すると、延床面積はいずれも1~3万平方㍍程度で、ランドマークになるような大規模オフィスはない。元々は駐車場だった敷地を開発するケースが多く、オフィスビルからオフィスビルへの建て替えが現状はほぼないのも特徴。エリア面では、いずれもJR新大阪駅の北側エリアに集中している。
新大阪でオフィスビルの開発が活発化する最大の要因は、好調なオフィス市況だ。大阪圏のオフィス空室率は過去最低水準の状態が続いており、賃料も上昇傾向にある。新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受け、マーケットへの悪影響も懸念されるが、関係者からは「それほど大きく落ち込まない」など強気の声も少なくない。
新大阪に限らず、大阪中心部では、中規模ながら大型オフィスビルに近いような高スペックのオフィスビルが増えている。共有部が充実していることに加えて、大規模な地震など災害に強いなどの特徴を持ち、首都圏で先行して人気を集めていた。この波がようやく大阪にも押し寄せてきている。
また、新大阪から西中島にかけたエリアは、“関西のシリコンバレー”とも呼ばれ、ベンチャー企業の集積が進んでいる点も、オフィス需要を下支えする。交通の便の良さにとともに、梅田などに比べて賃料が安いことなどが人気の要因となっている。
変化を続ける、新大阪エリア。自治体も新大阪周辺の再開発に向けて、中長期的なまちづくりの方向性を検討している。見据えるのは、2037年といわれるリニアの全線開通。1964年の東海道新幹線の開業から発展を続ける新大阪エリアが、再びオフィス街としての勢いを取り戻しつつある。